※本記事は「【CLASS8】東日本大震災の発生から5年。「世代別非常食のすゝめ」開催レポート【1/2】」の続きです。実際の試食のようすなどもご紹介していきます。
■ ゲストスピーカー、一般社団法人 復興応援団の佐野哲史さん
ワークシートに「日ごろ行っている備え」を記入したところで、ゲストスピーカーから「非常食」についての具体的なプレゼンテーションが始まります。
今回のゲストスピーカーは、一般社団法人復興応援団 代表の佐野哲史さん。
佐野さんは2011年3月14日に発足した仙台・東京・関西のNPOと日本財団の合同プロジェクト「つなプロ」の現地本部長に就任。発災6日後から数ヵ月間にわたって宮城県全域の避難所調査と人材・物資のマッチング活動に取り組まれていました。
中越沖地震と東日本大震災の経験で、「震災復興、そしてそこからの地域おこしに、人生で2度関わっている」という佐野さん。培ってきた知見をもとに、三菱地所レジデンスと作成した「そなえるカルタ」がグッドデザイン賞を受賞するなど、対外的にも注目を集める活動を行っていらっしゃいます。
■ 自衛隊の配給は、「早くても3日目」
今回はその幅広い知見の中から、「食糧」という部分にフォーカスをあてたプレゼンテーション。
実際に東日本大震災の避難所を巡回する中で目の当たりにしていたリアルを、下記の3つのポイントにまとめてお話しいただきました。
・自衛隊からの配給は、すぐには来ない
・配給される食糧はアレルギー非対応
・被災生活の食事は栄養が偏りがち
「自衛隊からの配給はすぐにくるというイメージがあるが、実際は早くても3日目。まずは道路のがれきなどを取り除く作業があり、物流が再開するのはその後。橋が落ちるなどの被害があると8日目でようやく初めての支援物資が届いたという地域もあった」
「避難所によって内容はバラバラだが、配給されるのはその多くが米やパンなどの炭水化物。そういった食生活をひと月も続けていると血糖値があがり、糖尿病のリスクが高まることも。またお弁当に多い揚げ物が続くと、高血圧や高脂血症のリスクが高まるといわれている」
現場のリアルをもとにした数々のエピソードに、会場も真剣に耳を傾けます。
■ 祭りなど地域のイベントが、災害時に思いがけず役立つことも
また佐野さんのお話の中には、「ある地域では、夏祭りを毎年行っていて、食器や箸など祭りの炊き出し用の備品が倉庫にあり、かつ地域の人も炊き出しのオペレーションに慣れている、ということが災害のときにも役立った」というエピソードも。
田舎における人のつながりはもちろんのこと、都会においても、地域のイベントや人々のつながりが災害時に役立つということを体感されたそうです。
■ 本当に必要な備えとは? 意見交換タイム
佐野さんのプレゼンテーションにヒントを得て、参加者は「新たに必要だと思った備え」を、それぞれのワークシートに記入し、その後グループで共有します。
中には、「缶詰などのいろいろな用意もしなければいけないけれど、まずは若い人も含めて何十人か集まり、皆で『何をどうしたらよいか』話し合う多世代の運営チームのようなものをつくってはどうか」と、非常食から本質的な組織運営へと話が発展していったグループも。
佐野さんのお話で、より避難生活のイメージが鮮明になり、どのグループでも活発な意見交換がなされていました。
■ 体験! 実際に食べて備える、非常食
「それでは、ここからは実際に非常食を味わって、体験をもとに備えを考えていきましょう」
ということで、お待ちかねの試食タイム。
今回ご用意したのは、CCJと復興応援団がおすすめするさまざまな非常食です。
・アルファ米(アレルギー対応のもの)
・かぼちゃグラタン(離乳食。乳幼児やご高齢の方でも食べられ、かつ野菜もとれる)
・おかず類(チキンカレー、肉じゃが、ハンバーグなど)
・ドライフルーツ、ドライ野菜(ビタミンを摂取できる)
・「はらくっつい TOHOKU」の缶詰
・カンパン
「はらくっつい TOHOKU」の缶詰というのは、三菱地所株式会社が東北エリアの食材・食ブランドの再生を通じて産業復興を支援する「Rebirth 東北フードプロジェクト」の一環として開発されたもの。
石巻・気仙沼の食材を使用し、東北のシェフと東京・丸の内のシェフがコラボレーションしたシリーズとして販路を開拓。地元エリアへの経済効果、さらに新しいコミュニティの醸成などをサポートしているそうです。
「3月3日には、3rdシリーズとして新しいメニューも誕生します」と、三菱地所株式会社 環境・CSR推進部の水田さん。「Rebirth 東北フードプロジェクト」や3rdシリーズについて詳しくは、こちらのプレスリリースをご覧ください。
■ さて、非常食のお味はいかが?
「これなら飲み込む力の弱い年配の方でも食べられそうね」
「けっこう、しょっぱいね」
「あ、これおいしい!」
実際に非常食を口にしながら、各グループの会話も自然と盛り上がります。
とくに「はらくっつい TOHOKU」の缶詰は有名シェフが監修しているだけあって「おいしい」の声も多く、机の上の非常食もあっという間に完食。意外なところではドライフルーツが、他の食品とは違い甘味ということで人気でした。
「冷たくてもおいしく食べられるように、非常食は味の濃いものも多い。味が濃いものばかり準備すると、被災生活で水がないのに水がほしくなる。水を多めに用意したり、ナトリウムだけでなくカリウムが摂取できる食品を用意したり、塩分やバランスにも気をつけて備蓄品を選んで」と吉高さん。
■ まずは命を守る、家具転倒の防止にも対策を
レポート前編でもお伝えしましたが、阪神淡路大震災では多くの方が「窒息・圧死」で亡くなったという事実があります。そこで今回も、最後に少しだけ、三菱地所レジデンスの岡崎さんから「家具転倒防止」についてお話いただきました。
「今日は被災生活のことを中心にワークショップを行ってきましたが、発災時は、まずケガをせず無事にいることが大切」ということで、家具転倒防止の製品「スーパータックフィットMNT」について紹介。強力なゲルと耐震バンドで家具を固定する製品で、2014年度のグッドデザイン賞も受賞しているものだとか。
粘着ゲルについては、さまざまな地震波による100回以上の実験を行いその効果を検証しているとのこと。実験のようすを録画した動画もこちらで公開されています。「まずは命を守るために家具の転倒を防止すること。今日から何か、ぜひ対策を」と呼びかけました。
■備え蓄えるだけでなく、近くに住まう方々と定期的に心の流通を
最後に各グループで、今日の防災ワークショップについて感想の共有タイム。今日初めて顔をあわせた方どうしとは思えないほど、打ち解けた表情で笑い合っているシーンが多く見受けられました。
共有いただいた感想には、
「非常時には、世代をこえてフットワーク軽く動ける組織をつくるのがとても大切だと感じた。また、今は非常食もおいしいものが多い。あまり『備蓄』ととらえず、日ごろのおかずとして備え、食べて循環させていくとよいと思う。最低1週間分は備えておかなければと思った」
という声も。また再開発組合 理事長の若村さんからは、
「マンションができた後も、みなさんと年に1、2度は会合を開いて、お互いに心の流通と行動の流通をはかっていきたいなと思っています。とくにお祭りが私は大好きなので、どうか一緒に盛り上げていただければ」
というコメントをいただきました。
まさにこういった、人と人とのつながりをつくっていこう、というのが『西新宿CLASS』のプログラム。すでにご参加の方々が、自然とそういったご意見をお持ちいただいていることを嬉しく、また心強く感じました。
■ 次回は4月29日(祝)「空と土プロジェクト」+「国産材を活用した空間づくり」
次回の『CLASS60』は、4月29日(祝)に大手町にて予定しています。
ナビゲーターに、NPO法人えがおつなげて 代表理事の曽根原久司さん、 ゲストスピーカーに家具デザイナーの小泉誠さんをお迎えし、「空と土プロジェクト」+「国産材を活用した空間づくり」のコラボレーションイベントを開催します。
新居でどんな住まい、空間をつくろうか……?とお考え中の方に、ぴったりのこちらのイベント。なお当日は「純米酒丸の内2016」というお酒の試飲もご用意する予定です。
詳しいご案内は改めてこちらのホームページにアップしていきますので、ぜひ引き続きご注目ください。
どうぞお楽しみに。